これまで議論してきたようにシクロヘキサンの場合、構造が単純で、安定配座や配座間のエネルギー差を見積もることが出来ました。
もう少し複雑な分子でも分子模型を組み立て考えることで安定配座を求めることは可能です。
しかし、配座間のエネルギー差は見積もることは、とても難しいでしょう。
シクロオクタンを例に考えて見ましょう。
シクロオクタンの代表的な配座は、chair-chair配座、chair-boat配座、boat-boat配座です。そのうち最も安定な配座はchair-chair配座で、二番目に安定なのはchai-boat配座でその差は1.47
kcal/molとさほエネルギー差は大きくありません。
このような小さなエネルギー差の配座変化を分子模型で議論することは危険です。
興味深いことに、8.14 kcal/molも不安定なboat-boat配座では全ての炭素-炭素結合はstaggered配座であるのに対し、最も安定なchair-chair配座ではeclipse配座の炭素-炭素結合が二つもあります。
従って、シクロヘキサンで議論してきたような配座間のエネルギー差を置換基の反発を基に単純な見積もりでは意味のある議論は望めません。
NMRスペクトルなど分析方法を用いず、複雑な分子の安定配座を求めようとした場合、各置換基のもたらす効果を精密に計算する必要があります。
そうなると、人間の手計算ではとても時間がかかってしまいます。そこで、計算機が必要となるわけです。
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